『アルバム』について寄せて頂いた文章です。


                                                                                                                                          • -

もう何年も前、京都に住む友達から1枚のCD-Rが届いた。
手書きで『アルプスep』と書かれた、録音状態の悪いざらざらした音源。
ギターは一音一音を確かめるようにたどたどしく
歌声はふたりとも、とても小さい。ぽつりと呟くような声。
けれど、どの歌もはじめからそうしていたかのように、凛と佇んでいた。
歌の中に女の子がいた。
じっとどこかを見つめて、長い旅を続ける
「たったひとり」と「たったひとり」の女の子。
つぐんだままの口から、歌が続く。


  
  いい子になんかならなくていいよ
  ただまっすぐに歩いて行けば
  朝も夜もこわくないんだよ


その歌は、あっという間にわたしを1人きりにした。
昨日、東京に引っ越した友達からCDが届いた。
またCD-R。まだマスタリング前の、アルプスの『アルバム』。
そこには、あの日からまっすぐに歩いてきたふたりの
8篇の今が綴じられていた。
   
   遠くても誰かと
   遠くても確かに
   話したりごはん食べたりしてる


東京と大阪で離れて暮らしながら
今も変わらず、ふたりが出会った京都の街で音楽を続けているアルプス。
きっと、ふたりは知っている。
弱いまま強くあること。
小さくてとても大きなこと。
ささやかで、かけがえのないこと。
手を差し伸べたり、歩み寄ったり
そんな大げさなことはしない。
けれど、ふたりの小さな歌は迷わず心に届いて、勇気をくれる。


このアルバムを開くたびに、わたしはたったひとりに戻るだろう。
そうしてまた、何かをはじめたり、お腹を空かせたり、大切な誰かを想ったりするんだろう。
また、誰かに会いたくなった。
アルプスの歌は、いつだってわたしを1人きりにしてくれる。



                                                                                                                                                                • -

カランコエ・こいけえりか○

”kalanchoe(カランコエ)”とは花の名からとっており、

「幸福を告げる」「あなたを守る」という花言葉
イベントが素敵なものになるように、音楽を大切に、
愛情をもって届けることができたら...という思いを込めて、
二人で立ち上げた「ファンファーレ」というイベントを
名古屋を中心に開催している。
 http://d.hatena.ne.jp/kalanchoe/